ニコちゃん備忘録

消化しきれない、もしくは覚えておきたいアレやコレたち

アメの効果は絶大だった

 アンパンマンのペロペロキャンディを、友人から貰った。一度ニコちゃんにあげると、口と手をベタベタにして、何度も「見て、アンパンマン!」と嬉しそうに食べていた。以来、思い出しては「アンパンマンのアメ!」と要求するようになった。決まって起き抜けの、朝の空腹時。今日も思い出して、ご所望された。

 けれども親としては、栄養バランスの面から朝ご飯にアメでは心配である。「朝ご飯食べたらね。」そう言ってアンパンマンのカボチャのパンケーキと、ミルク蒸しパンを食卓に用意する。「イヤ!」とゴネていたお姫様も、昨日パパと三人で大型スーパーに行って自ら選んでずっと持っていたパンケーキに、嬉しそうな顔になる。

 「洗濯物干してくるから食べててね。」そう言い残して洗濯物を持って二階に行って、十分ほどで降りてくると、パンケーキは全てなくなっていた。蒸しパンは少しかじられていた。驚いて、「偉いね、いっぱい食べたね!」と褒めると、「アメ食べる!」食欲、というかアメ欲が凄い。

 牛乳をすすめるも、泣いて飲まない。ダイニングソファーの合皮はニコちゃんの涙と鼻水で、広範囲が水浸しだった。そんなに泣くか、と笑いながらニコちゃんの顔とソファーを拭く。「持ってるだけやで。」と、袋に入ったままのアンパンマンのペロペロキャンディを渡すと、一瞬で泣き止んだ。また私は笑う。

 ニコちゃんは嬉しそうにアメを持つ。「舐めるのは着替えてからな。」そう言うと、素直に私の言葉に従ってくれる。今日は専門学校の週に一度のスクーリング授業に行かなければならない日で、時間が迫っていたのでニコちゃんの迅速な行動が非常にありがたい。ついでに歯磨きをして、顔を洗って、髪に水スプレーをかけてクシとドライヤーで寝癖を直す。どれもスムーズにさせてくれた。アメの効果、すごい。

 全ての準備が終わると、ペロペロキャンディについていたビニール袋を剥がし、ニコちゃんに手渡す。「保育園の部屋に入るまでやで。」ニコちゃんは頷く。

 歯磨きが意味がないけれど、それよりもニコちゃんがご機嫌でいてくれることが今は最優先だ。ニコちゃんは嬉しそうにアンパンマンの形をしたアメを眺め、ペロペロキャンディの棒を持ってニコニコしている。チャイルドシートに乗るのにも、何の文句も抵抗もなかった。アメ、すごい。ヤバい。

 保育園に向かう道の途中、信号待ちで、「ママ、見て。」と笑顔でアンパンマンのアメを自慢する。「良かったね、アンパンマンやね。」いつもの悲しそうな、怒っているのかと心配になる顔より、笑顔のニコちゃんはやはり嬉しい。アンパンマンのアメの効果に心底驚く。

 保育室に到着すると、先生が迎えに来てくれる。「あれ?何持ってるのニコちゃん。」先生がアメに気づいて、私は「ニコちゃんママアメ貰っとくね、約束。」と言うと、ニコちゃんは笑顔のままアメを手渡す。「偉いね!渡せたね。」と褒めてくれる先生の言葉に、我が子が誇らしくなる。「偉いね。」先生に同調して、ニコちゃんの頭を撫でる。

 「お母さんそれ捨てときましょか?」先生のありがたい申し出に、「や、私が舐めときます!」ともったいない精神という名の貧乏性が発動すると、笑われた。は、恥ずかしい…。車に戻って、アメを舐めながら専門学校へ急ぐ。今日は何とか余裕を持って間に合えた。アメの効果、すごい。

 友人と、ニコちゃんに、感謝。大人だってやりたいことを我慢するのは苦痛なことだから、ニコちゃんのやりたいことはなるべく叶えてあげよう。ニコちゃんにも自分にも、優しくいよう。