ニコちゃん備忘録

消化しきれない、もしくは覚えておきたいアレやコレたち

小さな生き物

 何やこの小さな可愛い生き物は。身を任せて安心しきって私の手を求めて規則的な寝息をたてている生き物は。私のことが大好きで、求めてやまない小さな命。

 昨日、ふと夜中に目を覚まして寝れなくなって、ニコちゃんを見ていた。外は予報どおりの激しい雨。階下に夫の様子を見に行って、トイレに行って、ベッドに戻る。夫がベッドに入る。夫は寝る。私は寝れない。ニコちゃんを見つめた。

 激しい雨に、何度かニコちゃんが起きる。私に寄ってきて、手をつなぐか、私に抱きつくか、私が腕まくらをするかのどれかをすると、安心して寝る。可愛い。暖かい。こんなに小さいのに、ちゃんと生きてる。それだけで、なんだか泣きそうになる。

 あの日。ニコちゃんが私のお腹から出てきた日。いきむのが下手くそで酸欠で意識が飛んで、大きめの看護師さんがお腹に乗って、大人数の中で見守ってもらいながら、手伝ってもらいながら、何とかニコちゃんが無事にこの世界に出てこれた日。私が送り出せた日。

 ニコちゃんに対する責任は半分果たした、みたいな気持ちになった。生まれてからが大変、とは思うけれど、お腹の中にいる時の不安は計り知れなかった。怖かった。私のせいで小さな命が消えてしまったらどうしよう、と。無事に生まれてくれてほんとうによかった。

 生まれてきたニコちゃんを見ても、宇宙人のようにしか思えなくて、そんな自分を恥じて、責めた。人間じゃない、と思った。母性の足りなさに絶望した。

 今私があの日に戻れるなら、あの日の私に何て声をかけるだろうか。関係はつくっていくもので、積み重ねで、過ごした時間は決して嘘をつかない。毎日、成長していないように思えても、確実に少しずつ成長している。私も一緒にニコちゃんと育ててもらってる。子育ては、自分を育て直して、見つめ直すことでもある。

 ニコちゃんと私、母と私、夫と私。ニコちゃんが生まれてきてくれて、元気に育ってくれて、今生きててくれて、たくさんの人を笑顔にしてくれている。仲を取り持ってくれている。育ててくれている。生きてくれているだけで嬉しい。

 そんな感情を、育ててくれてありがとう。私も生きていていいのかな、という気になる。もしかしたら私も、生きているだけで誰かの支えになれているのかも、と思える。少なくとも、ニコちゃんは私を必要としてくれている。必要とされることは、嬉しい。

 生まれてきてくれて、ありがとう。どうか、たくさん幸せになって。