ニコちゃん備忘録

消化しきれない、もしくは覚えておきたいアレやコレたち

歩いて鳴く犬のオモチャと、成長

今日は姪っ子の誕生日パーティーにお呼ばれしに、実姉の家にお邪魔してきた。私と違って美人顔で、スタイルが良くて、気が利かないけど人を気遣う、優しくないけど優しい姉。

実家の一番よく使う和室には、姉の様々な賞状がずらりと飾ってある。卓球で団体優勝した表彰状、習字のすごい賞、おーいお茶の俳句の入賞を示すもの。私の賞状は、くもんの努力賞のみだ。ショボい。ショボすぎる。情けない。

三つ年上の姉は、私より三年先に結婚した。結婚して子供を産むという呪いのかかった私にとっては、それは心底羨ましいことだった。今までの姉の苦労を差し引いても。それと同時に姉を義兄に取られるようで非常に嫌だった。結婚式のウェルカムボードを描くように頼まれたのに、仕事を理由に描けなかった。それでも姉は嫌な顔一つしなかった。

昔からそうだ。友達と遊ぶのに、私が付いて行くのを、嫌だと断られたことがない。いつも気遣ってもらっていた。大人になった今でも、地元の小さな花火大会に一緒に行く相手がいなければ、友達と行くのに混ぜてくれる。私はそんな気遣いを姉にしたことがない。けれども姉はそれで私に恩を売ったことなど一度もない。

姉の初めての子供が産まれて以降、私は会うたびに日に日に大きくなる姪に、何かしらのプレゼントをあげていた気がする。子供と接する機会が少なかった私に、初めての身近な赤ちゃん。頭の中だけの知識を必死に繰り出して、姪が何をしたら喜ぶのか考え続けた。自分の子供以上に可愛がって、夫に怒られたこともある。

その姪がもう五歳。幼稚園の年中さんになった。トイレに自分一人で行けるようになった。字を読めるようになった。自分の名前を書けるようになった。妹にビンタされてもやり返さない。オモチャをニコちゃんに嫌な時でも我慢して貸してくれるようになった。妹に自ら進んでオモチャを使わせてあげられるようになった。

姪が私が選んだオモチャで遊んでくれると嬉しい。姉が美容師なので、ハンドルを回すと粘土の髪が伸びてカットが出来るオモチャを買った。「これ欲しがってたやつやん、良かったね、姪ちゃん。」天然で気遣いの姉は、私を喜ばすのが上手だ。怒らせるのも上手だけど。

早速遊ぼうとする姪っ子から、ニコちゃんが粘土のオモチャを奪おうとする。さすがに姪っ子は全力で抵抗する。ニコちゃんは泣く。姪っ子はすみっこに逃げる。逃げたものの、大人がいないので自分一人では組み立てられず、遊べない。不貞腐れる。

見兼ねて、声をかける。「一緒に遊ぼうか。」ニコちゃんや妹ちゃんに見つからないよう、こっそり。粘土を人形の中に詰める。セット台に人形を設置する。ハンドルを回す。人形の頭に空いている穴から、粘土がニョロニョロと湧き出てくる。まるで髪がすごいスピードで伸びるみたいに。

キモ面白い。自慢したい姪っ子を宥めて、静かに遊ぶ。伸びた髪をハサミで切って、好きな髪型にしていく。途中で姪2号が気付いてやって来て、姪っ子は妹にハサミを貸してあげる。ニコちゃんも気付いてやって来る。三人の中で一番お姉さんの姪っ子は、ニコちゃんにもハサミを貸してあげる。

わいわい言いながらも、三人でなんとか喧嘩をせずに遊ぶ様子を、姉と二人で見守った。義兄がその様子をスマホで撮影する。

姪っ子と姪2号の誕生日パーティーには、義兄の両親と、うちの両親も参加した。それぞれが料理を作って持ってきてくれた。我が家は飲み物だけ少し買って持って行った。

去年は姉の家とうちの家を比べて、違いに胸が痛かった。今は違いが痛くない。冷静に見ることができた。なぜなのだろうか。成長したのであればいいのだけども。

実父が姪っ子と姪2号への誕生日プレゼントの他に、ニコちゃんへもオモチャを買って持って来てくれた。義兄の両親からもニコちゃんにお菓子のプレゼント。その心が嬉しい。我が家は姪っ子達へのプレゼント以外、何も準備していなかった。学習能力とマナーが不足。

実父から貰ったオモチャは、歩き回りながら鳴く犬だった。同い年の姪2号には、同じシリーズの猫。ニコちゃんに一年前、歩き回って鳴くパンダをアドベンチャーワールドで買ったのだけど、「怖い〜〜〜〜!!!!」と鳴くので封印していた。犬のオモチャを見た時は、マジか、と思ってしまった。

けれどもニコちゃんは嬉しそうに犬を抱く。実父が姪2号の猫に電池を入れる。猫が歩いて鳴くと、ニコちゃんは泣きながら逃げ回り、抱っこをせがむ。犬に電池を入れようとすると、「電池いらん〜〜〜!(泣)」と全力の拒否。仕方がないのでニコちゃんが犬を手放した隙にこっそり電池を入れた。

ニコちゃんの見えない聞こえないところで電源を付けて動作を確認すると、猫よりも歩くスピードは遅いものの、猫よりも激しく鳴く。これは無理だな、と諦めて席に戻ると、パパがニコちゃんの目の前でスイッチをオンにする。ビビって泣いて逃げ惑うニコちゃん。義兄の父に抱っこをせがむ。義兄にも抱っこをせがむ。今まで抱っこをねだったことなんてなかったのに、と母は驚く。

もう犬のオモチャは嫌いになったかな、と思うと、そうでもない。スイッチさえ入らなければ、犬を気に入り、持ち続ける。なんならスイッチが入っていても、近くにいることが出来るようになった。なんと、まあ。苦手は遠ざけておくだけではダメなのか。荒治療でも、慣れさせることが必要なのか。

9時になり、実母に促されるまま夫に帰ろうと提案し、ニコちゃんに姉と義兄と姪っ子たちと義両親と実の両親に、「ありがとう」と言いに回らせる。義兄と義両親へも、ニコちゃんは人見知りをすることなく、感情を込めてお礼を伝えられていた(ような気がする)。犬のオモチャのお陰か。怪我の功名である。

家に帰って犬のオモチャのスイッチを入れると嫌がっていた。やはり完全克服という訳にはいかないようだ。けれどもお風呂を上がって寝室に行く際に、犬を抱き締めて階段を上がった。寝る時も肌身離さず抱きついて、眠りについた。おじいちゃんへの愛情なのか、犬のオモチャ自体への愛着なのか。どちらにせよ、怖いものが多すぎるニコちゃんの一歩前進、だと思う。

(余談1)ニコちゃんの怖いものは多岐にわたる。暗闇、映画館やアート展などの薄暗いところ、動物全般(魚は割と平気)、知らない人。怖がりなのは、危機管理能力があり、リスクヘッジを考える賢さがあるということにしておこう。(めちゃくちゃポジティブな物言いいだ。)

(余談2)我が家が姉の家に到着した時、ちょうど義両親が到着し、姉の家族と義両親、我が家だけの状態だった。非常に静かで、義兄が我が物顔で幅を利かせていた。

けれども実母が到着すると、途端にその場の空気が変わった。止まらないマシンガントーク。気遣いの押し売り。自分の感情と思いを全て吐き出さないと気が済まない病気の、気遣いバージョン。しばらくすると収まったけれど、母、さすがである。あらためて実母の存在力と影響力、リーダーシップを思い知った。良い面も悪い面もあるけど。

義兄のチクリチクリとした攻撃は、義両親に諌められていた。義両親は穏やかで静かな、独特な円満な優しい方たちだ。けれども実母と実父が来るまでは、その場の空気の主導権を握っていたのは義両親で、あらためて姉はこの義両親のところへ嫁に行って月日を築いてきたのだと思い知った。知らなかった世界を見たようで、新鮮だった。